一日体験入隊 野口レポートNo324

野口レポートNO.36号(当時54歳)の復刻版です。

まだ駆け出しですが相続に特化した不動産屋として色々な相談を受けるようになりました。多いのが相続問題と借地問題です。この二つは法律と経済に人の心が絡んでくるのでよく似ています。

相続は10か月以内に、①遺産分割を合意する。②相続税の申告をする。③相続税を現金一活納付する。億単位の相続税が課税される地主は、これらの資金を調達する土地換金作業が要となります。

この土地をめぐり蜜に集まる蜂のごとく不動産ブローカーが寄ってきます。なかには己の利益を優先しようとする輩もいます。そして商売にならぬと見るや潮が引くように一斉に去っていきます。

不動産業に転業し5年となります。不動産業になれることは必要です。だが、染まりたくありません。「汗をかき報酬を頂戴する」この原点に戻り、自分を見つめたく体験入隊をしてきました。

入隊と言っても自衛隊ではなく、電気工事会社の友人にお願いして一日入社です。条件は日当をいただくこと、雇用関係が成立し遊びではなくなります。

お盆休みの12日、むかえのトラックに乗り現場に到着、自分の分担は地下70センチ長さ5メートルを掘り返す仕事です。

しばらく肉体労働から遠ざかっており、最初はすぐ息切れです。息が整ったら穴を掘り、穴を掘ったら息が切れ、このくり返しです。頭の先から足の先まで汗がふき出します。

久々に体験する激しい労働です。そのうち足腰がいうことをきかなくなります。気力と腕の力は残っており、穴の淵に座り込み腕だけで堀りつづけ足腰の回復を待ちます。しばらく掘り下げていくと、前回工事をした業者の弁当のカスやペットボトルが出できました。この業者のモラルの低さにあきれます。

苦労しながらもひと段落、ようやく昼休み、空腹感はあるが暑さと疲労のため食欲がわかず弁当は多くを口にできません。

つかの間の休息で元気が戻り、午後の作業も何とか耐えました。社員の皆さんが無言で励ましてくれます。スコップにコツンと手応え、ヤッタネ!ついに地下70センチの配管に到達です。

他の仕事を終えた社員さんの応援もあり、穴を埋め戻し定刻には作業も終了し、与えられた仕事を無事やり遂げることが出来ました。

異業種一日体験でしたが、穴掘りを通し汗で得る報酬の尊さを再認識すると同時に、「千里の道も一歩から」着実な継続が勝利を得ることも身を持って感じました。汗を出し、美味しくのめるはずであったビールが疲労困憊で喉を通らなかったことが残念です。

己の生き方に迷うことなく、新しいスタイルの不動屋として精進し、少しでも皆様のお役に立てるよう頑張りたいと思います。

平成11年9月1日

虚しさ

人はこの世の虚しさに目覚めなければならぬが、
しかしそれだけではまだ足りない。
人生の虚しさを踏まえながら、
各自応分の「奉仕」に生きてこそ人生の真の味わいは分かり初める。
[ 森信三 一日一語 ] より

「救い」とは「自分のような者でも、尚ここにこの世の生が許されている」・・・
という謝念でもあろうか。
そしてその見捨てない最後の絶対無限な力に対して、
人びとはこれを神と呼び仏と名づける。
[ 森信三 一日一語 ] より

この子のお陰

精薄児や身障児をもつ親は、悲観の極、必ず一度はこの子と共に身を滅ぼしたいとの念いに駆られるらしいが、しかもその果てには必ず、この子のお陰で人間としての眼を開かせてもらえたという自覚に到るようである。
[ 森信三 一日一語 ] より

論争

わたくしは文章による論争というもはしたことがない。
それというのも、論争は第三者には面白くても、
当事者双方は、それによってお互いに傷つけ合うだけだからである。
[ 森信三 一日一語 ] より

言葉

言葉の響きは偉大である。
一語一音の差に天地を分かつほどの相違がある。
それゆえ真に言葉の味わいに徹するのは、
そのままいのちに徹するの言いといってよい。
[ 森信三 一日一語 ] より

肩書

人間は退職して初めて肩書の有難さがわかる。
だが、この点を率直に言う人はほとんどいない。
それというのも、それが言えるということは、
すでに肩書を越えた世界に生きていなければ出来ぬことだからである。
[ 森信三 一日一語 ] より

出所・進退

公生涯にあっては、出所・進退の時機を誤らぬことが何よりも肝要。
だが相当な人でも、とかく誤りがちである。
これ人間は自分の顔が見えぬように、
自分のことは分からぬからである。
[ 森信三 一日一語 ] より