相続の仕事をしていると弁護士先生のお世話にならなければ対応ができないことがあります。下記の項目はよくある事例です。
① 遺留分侵害額請求権の行使、もしくは行使された時の対応
② ウンともスンとも言わず、相手が無視を続ける
③ 調停が不調に終わり審判に移行してしまった
④ 何回協議しても遺産分割がまとまらず法律で裁くしかない
⑤ 相手が代理人(弁護士)を立ててきた
以下は弁護士先生にお世話になった典型的な事例です。
◎兄と弟の2人兄弟で弟さんからの相談です。兄は奥様と長男と長女の4人家族でした。
高齢の兄は数年前に奥様に先立たれひとり暮らしです。介護が必要となり、近くにいる弟夫婦が、買い物、食事の支度、入浴のお世話、通院の付き添いなど、親身になって世話をしています。
嫁いだ長女は義父母と同居しており、独身で疎遠の長男は離れた所に住んでいます。2人とも父親の世話を叔父夫婦にまかせっきりで、有難いとの感謝の気持ちがありません。
兄は全財産を弟に遺贈するとの公正証書遺言を残していました。遠くにいる疎遠の身内より、親身にみなって世話をしてくれている身近な人に自分の財産を渡したくなるのは人情です。
そして兄が亡くなりました。49日の法要も済ませ、遺言があること、遺留分を戻すことを伝えました。姪は納得したのですが、甥は理不尽な要求を繰り返してきます。さらに弁護士から遺留分侵害額請求の内容証明が届き裁判となりました。正義はこちらにあります。だが常識が法律に勝てぬことなどこの世界の常です。
いよいよ裁判も大詰めとなり、明日は原告(甥)と被告(叔父)の証人尋問です。普通の人が法廷に立つなど生涯に一度あるかないかです。本人は緊張し前夜は眠れなかったそうです。自分達がやってきたことを「ありのまま話せばよい」と背中を押しました。
いよいよ開廷です。傍聴席のすぐ前に証人台があり、傍に私がいるので本人も気持ちが楽になったそうです。正面1段上に裁判官席があり、その下に書記官席、左手に原告の弁護士席、右手に被告の弁護士席があります。
互いの弁護士が被告と原告に一通りの質問をしたあと、最後に裁判官から「それでは裁判所からの質問です」と、双方にいくつかの質問があり、3時間ほどで閉廷となりました。
弁護士チームの適切な対応も功を奏し、数日後に当方の主張にそった和解が成立し、ご夫婦は長い間の呪縛から解放されました。気がつけば内容証明が届いてから3年の歳月が過ぎていました。
最後まで寄りそってきましたが、やむを得ず裁判となれば、精神的かつ経済的な負担に加え、貴重な時間を費やします。そして何よりも大切な財産(家族や親族の絆)を失います。