渉外相続 中條レポートNo282

渉外相続とは、相続人または被相続人が外国籍の場合や、相続財産が複数の国にまたがる場合に適用される相続手続きです。

この手続きでは、日本国内の法律だけでなく、外国の法律や国際的な取り決めも関わるため、通常の相続手続きに比べて複雑になることが多いです。

たとえば、相続財産が日本国内に存在し、被相続人が外国籍で相続人が日本国籍の場合、日本の国際私法では、原則として被相続人の国籍国の法律が相続に適用されますが、財産の所在地国の法律(つまり日本法)が優先されるケースもあります。このように、相続が絡む国の法律を確認しながら手続きを進める必要があります。

日本国内に相続財産があり、被相続人が日本国籍、相続人が外国籍の場合は、相続手続は日本の法律で行います。
相続人の国で必要となる書類や、遺産分割協議書への署名捺印(実印)・印鑑証明に代わる書類の準備など、手続きが煩雑になることが多いです。

また、相続税の面でも複雑な状況が生じます。
日本国内にある財産については、日本の相続税が課されますが、相続人や被相続人が外国籍の場合、相続税の取り扱いが変わる可能性があります。
たとえば、相続人が外国籍の場合、相続人の居住国でも相続税が課されることがあり、二重課税の問題が生じることがあります。
こうした場合、二重課税防止条約に基づき税金の調整が行われることもあります。

さらに、渉外相続では財産の移転も一つの重要な課題です。
日本にある財産を外国籍の相続人が取得する際には、その財産を相続人が居住する国に移転するための手続きが必要です。

移転手続きには、現地の資産を預けている金融機関等の制度や、その国の法律等、手続きをスムーズに行うことに支障が出ることが多いので、制度の理解と経験が重要なポイントとなります。

渉外相続は国内外の法律や制度が絡み非常に複雑です。
事前にしっかりと準備することが、スムーズな相続手続きの鍵となります。

優しさのなかに一筋の強さを 野口レポートNo337

NPO法人相続アドバイザー協議会が主催している「相続アドバイザー養成講座」があります。相続をあらゆる分野から網羅したもので、1講座2時間で20講座(現在は18講座)あります。その第1講座の講師を20年間つとめました。

受講者は受講料を払い時間を使って講義を受けにきています。第1講座の出来がよければ、申し込んでよかったと思うでしょう。

もし出来が悪ければ、こんなレベルかと裏切られた思いを感じ学習意欲が下ります。第1講座の講師はそれなりの責任があり、プレッシャーもかかります。まして当時は、協議会副理事長の要職についており、色々な意味で試されます。

土地家屋調査士で行政書士の中田隆之さんがいます。平成20年4月に養成講座を受講されました。その時のことをコラムに書いています。一部を紹介したいと思います。

『相続アドバイザー養成講座第1講座のことは今でも鮮明に覚えています。その時の第1印象は、なにやら人の良さそうな「おっちゃん」が出てきたなあ~。(そのときの素直な感想です。すいません…。)第1回目の講座だし初歩的な話をするのかな~? そんな軽い気持ちでした。しかし、「人格の伴わない資格者は人を不幸にする。そういう人は仕事をするべきではないね……。」

弁護士や税理士、司法書士といった世間では「先生、先生」とよばれている方々を前に、笑顔で言い放ったひと言は衝撃でした。

まさに、私自身の悶々としたジレンマを言い当てられたような思いでした。』 野口賢次著「譲る心と感謝の気持」より抜粋。

彼は「このひと言」で大事なことに気付きました。正しく進めばおのずと道は開けてきます。今では神奈川の測量会社ではトップクラスへと成長しました。他に相続サポートセンターや、地方都市と組んで空き家の再生なども手掛けています。まだ53才で「伸びしろ」もあり先が楽しみです。

人間には性質と性格があります。性質は持って生まれた気質です。変えることはできません。性格は感性と意志の傾向であり、努力次第で変えることができます。クラス会で久々に会った同級生の誰もが卒業当時のままである。これも変わることができない証です。

人は「優しい人」と「強い人」がいます。これは持って生まれたものです。優しさがベースにある人は、優しさのなかに一滴の強さを持つこと、強さがベースにある人は、強さのなかに一滴の優しさを持つこと、この一滴はコーヒーに入るミルクと同じです。

「優しさと強さ」「強さと優しさ」これを合わせ持つことで魅力が出てきます。魅力のない人間に相手は心を開いてくれません。

私のベースは優しさです。が、優しいだけではただの人の良い「おっちゃん」です。相続の仕事などできません。魅力ある人間であるがためにも、自分の持っている一滴の強さを磨いてまいります。