自筆証書遺言で怖いのは、遺言の内容に不満を持つ相続人から、遺言が「無効」だと言われる事です。無効理由で多いのは
➀「お父さんが書いた字じゃない」
②「あの時、遺言を書く意思能力はなかったはずだ」
このように言われたとき、「有効である」とする証拠が必要です。
➀に備え被相続人が生前(出来れば遺言作成近時)に書いたものが必要です。
手紙・ハガキは消印がありますから、書いた日を推定でき有用です。(但し、お正月の年賀状は消印がありませんから注意が必要) 文字は体の具合や、姿勢等によって異なりますから数個の自筆の書を集めておくとよいでしょう。
自筆の書を相手方から、本人が書いた証拠があるのかと言われることもあります。保険契約、銀行借入の銀行員等の面前で本人に記入を求められる書類は貴重な証拠となります。
しかし字を書く事が少なくなった時代です。自筆の書を収集するのも簡単ではありません。自筆だと証明出来る書類が、自筆証書遺言をつくるときの必要書類だと言っても過言ではないでしょう。
②に備え、病院での医療記録や、介護施設での介護記録が役立つことがあります。
遺言作成時の本人の生活状況、家族の関わりかた等の周辺状況も判断材料になります。
ビデオで遺言書作成風景を撮る、遺言作成時の会話を録音することも証拠には役立ちます。
また遺言の内容がシンプルな程、意思能力に関して有効性が認められやすいでしょう。
筆跡鑑定も確実な証拠ではない(鑑定する人によって結果が異なることもある)ように確かな証拠を集めるのは困難なことです。
状況証拠でも数多く集める事が大切です。
裁判官になるほどと思わせることが肝要です。
このように考えると、お勧めはやはり公正証書遺言です。
無効になる心配はなく(確率は0ではありませんが)安心出来ます。
遺言は、そもそも安心するために作るものだからです。