ニューヨーク研修の思い出(2)野口レポートNo220

   ドントウオーク(赤信号)は、どんどんウオークです。「皆で渡ればこわくない」など、日本のような低い次元ではなく、個々が責任を持って信号無視、お巡りさん何も言わず、なぜ? と思ったら……、「自己責任・自己主張の社会」です。

 自由の女神に次ぐNYのシンボルであるエンパイアステートビルに上がってみました。このビルはバブルの時に日本人が買い取り所有しているとの話です。だが、テナント等の賃料は90年間リースホールド(他人が賃貸権を所有)されており、自分の土地に金の鉱脈があるのに採掘権は他人に取られてしまっているのです。

 空中権移転も当たりまえに行われている米国では、上の余剰容積が売られてしまっているなど、物件をしっかり調査しないと「出がらしのお茶葉」をつかんでしまうこともあります。

 弁護士試験も日本と比べかなりゆるやかです。ただし、実力がともなわなければメシは食えません。弁護士資格があってもタクシー乗務や皿洗いをしている人も多くいます。

 ある弁護士事務所(ビル1棟全部がひとつの事務所です)を訪問しました。数百名の弁護士が各分野に特化し、弁護士どうしが互いにパートナーシップで仕事をしています。

 米国では士業(弁護士・税理士などの専門家)が何でもできると言ったら、それは何にもできないことを意味します。

 不動産の考え方も、土地の上に建物がのり収益を生み出し初めて不動産です。米国はとてつもなく広い国です。土地自体に価値はなく、土地有効活用の発想もありません。

 これら不動産を扱うのは不動産ブローカー(日本で言う不動産業者)です。米国の不動産業者は、仕事に誇りと高い倫理観を持っています。賃貸仲介はテナント側業者と家主側業者とが、お客様に有利な契約確保をめぐり、互いに激しいネゴシーエション(交渉・折衝)を繰り返します。契約自由の社会はネゴとサインが命です。

 日本のように契約書のひな形はありません。業者のネゴであらゆる場合を想定した契約内容となり、同じ契約はふたつとありません。

 契約書もペーパーでなく分厚いブックです。弁護士や税理士が作成した契約書を最終的には不動産ブローカーが手直しをします。

 テナントは全て定期借家契約です。不動産ブローカーの仲介手数料は日本の業者のように決まりはなく上限なしのフリーです。

 定期借家は長期間の契約で家賃収入が確定するので報酬も契約期間とお客様への貢献度を加味し交渉で決まります。

 米国は資格だけではメシの食えない国です。実力が伴って「なんぼ」の世界です。ハイレベルの技術と知識を持ち、プロ意識に徹した米国不動産ブローカーはハイステータス、米国での社会的地位は弁護士や税理士の上に位置しています。    次号につづく

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