相続分の譲渡と落とし穴 中條レポートN0167

    相続人には民法で定められた相続分があります。この相続分、人に譲り渡すことが出来ます。
全国にちらばり疎遠になった相続人がABCD4人とします。相続財産は「甲土地」。
遺言が無い場合、相続人Aに「甲地」を相続させる場合の方法は遺産分割協議書でAに相続させることを合意する方法と、BCDの相続分をAに譲渡する方法の二つです。

 遺産分割協議書で手続する場合、4人全員の署名が必要です。4人連盟で署名しなくても、4枚の遺産分割協議書にそれぞれ署名捺印すれば手続できます。しかし遺産分割協議書の内容は全て同一でなければなりません。各地の相続人全員から遺産分割協議書が届いた時点で手続をします。(不動産の場合印鑑証明の期限はありません)

 相続分譲渡により行う場合、相続人B、相続人C、相続人Dからそれぞれ相続人Aへ相続分を譲渡します。この譲渡はBA CA DA間のそれぞれ相対の取引となります。
Bは承諾しているが、CDは難色を示しているような場合。Bの気持ちが変わらないうちに相続分を譲渡してもらう。そしてCDには承諾してもらう都度、相続分を譲渡してもらいます。
このときの書面は相対ですから各々内容が違っていてもかまいません。Bは無償、C100万円、D200万円で相続分を譲渡しても相続人間で内容はわかりません。
そしてこの手続に添付する印鑑証明には有効期限がありません(不動産に限る)Bが承諾してから全員が承諾するまで2年かかっても、印鑑証明が期限切れになり、手続が出来なくなることはありません。
上記の理由から、事例のように相続人間が疎遠で全員が合意するまで時間がかかりそうな場合、相続分の譲渡は便利です。
しかし注意点があります。紙面の都合上詳しくは説明出来ませんが、相続開始後、相続人Bが亡くなり、その子B1B2の署名が必要な場合等です。この場合相続分の譲渡で手続をしようとすると、手続が非常に煩雑になります。

 便利が故に使いたくなる相続分譲渡。しかし便利なものには落とし穴が付き物です。
大切なことは、相続で不動産手続を行う場合、事前に司法書士に確認することです。不動産の相続手続は相続分譲渡に限らず思わぬ支障が生じる場合があるからです。

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