死の淵を見た男 中條レポートNo146

「死の淵を見た男」(PHP)を読んで。

福島原発は危機的だった。

爆発すれば“北海道”“福島を中心とした東北・関東”“西日本”と日本が3分割された。
東北・関東は放射能で住めない地域になった。
東北・関東の人々が大移動することは想像を絶する困難があっただろう。

その危機が救われた。
救ったのは何か。
現場で最後まで原子炉に注水作業を続けた東電、関連会社、自衛隊の人達であったことは間違いない。

現場総責任者の吉田昌郎氏が万策尽きて神にすがった。
しかし決してあきらめたわけではない。
神頼みしかない状況だが最後まで注水することを決めたのだ。

最後とは「死」。それに追随した東電社員が50数名。共に死を覚悟した仲間だ。
吉田昌郎氏という人を導ける稀有な人物があの時の現場総責任者だったことが不幸中の幸いだった。
人が持つ力の無限性を感じる。
その後自衛隊や、一旦避難した作業員も加わった注水活動が功を奏し危機的状況は打開できた。

この事故は人災だと言われている。
10m以上の津波を想定した危機管理がされていなかったからだ。
数年前スマトラ沖で発生した津波が起きたときもその事実を考慮した安全対策を取らなかった。
9.11のようなテロが原発に向けて起きたら…….。
考えただけでもゾッとする。
テロに対する安全策がどれだけ取られているか。
起りうる可能性のある全ての事象に対して対策を講じていたら採算は合わず、原子力発電を続けていくことは出来ない。
火力発電に戻せば地球温暖化の問題が出てくる。

抜本的な解決策がないまま、妥協策ですすんでいる電力対策。
景気という幻想を追い求め続ける性が妥協策を促進しているように思える。

これでよいのか。
命をかけて故郷・日本を守った人達はどう思っているのか。
東電、政府に責任を押し付けてよいのか。
また押し付けて問題が解決出来るのか。
便利さを求め享受してきた国民が責任者であり、責任を取らなければならないと思う。
その観点から対策をたてていけば、違った対策が出てくるのではないか。

日本が分断されていてもおかしくなかった災害。
この戒めを無駄にはしたくはない。

 

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