預貯金可分債権判決 中條レポートNo189

No186に掲載した最高裁の判決(預貯金は、法定相続人に法定相続分で分割される財産のため遺産分割の対象ではない(平成16年最高裁判決)ことに対し意義を申立てた裁判)がでました。(平成28年1219日)

「普通・定期預貯金は遺産分割の対象とするのが相当である」としたのです。予想通りの判決となりました。

但し、この判決には裁判官の補足意見が多数付されています。

そのひとつが、遺産分割がまとまらず預貯金を引き出せないで困窮してしまう人をどうするかという問題です。

例えばこんな場合です。

夫が亡くなりました。夫婦には子供がおらず、親は既に亡くなっています。兄弟姉妹甥姪は縁遠くなっている。妻は夫の預貯金から生活費を引き出して生活していた。

この場合、相続人は妻と兄弟姉妹。(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥姪までが相続人)遺産分割が容易にまとまらないケースも多くあります。(縁遠くなった兄弟姉妹甥姪と関わりをもたず預金を引き出したいという人もいるでしょう)

分割協議がまとまるまで預金から引出せないと、妻の生活に支障をきたします。

この問題に対応するためのいくつかの案が考えられています。

➀預貯金債権を遺産分割の対象に含めるが、遺産分割協議が成立する前でも、法定相続分で引出すことが出来る。但し、他の財産(不動産等)を遺産分割する場合、預貯金から引出した金額を考慮して取り分を決める。預貯金から引出した分が貰いすぎになっていたら返還する。

②原則、遺産分割をしなければ預貯金は引き出せないが、状況に応じて特例を設け一定の金額は引き出せるようにする。

この他の補足意見に、預貯金以外の債権(例えば損害賠償請求権)はどうするのか等々があります。

今回の最高裁判決は実務に大きな影響を与えます。(注目判決と言われる所以です)

想定される問題に対しては早急に対応方法を示してもらうことが、不要な相続争いを防ぐためにも必要です。

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