配偶者居住権 中條レポートNo202

法制審議会で議論されていた民法の相続法改正案が決まりました。国会で審議され、法が改正され、施行されるのはそんなに先ではなさそうです。

配偶者を優遇するため、配偶者の法定相続分を上げることは廃案となり、代わって出てきたのが配偶者居住権です。

配偶者居住権とは、残された配偶者が自宅(持ち家)に亡くなるまで住み続けられる権利のことです。但しこの権利は配偶者であることで、必然的に与えられるものではありません。与えられるのは次の場合です。

・遺言書に配偶者に与える旨が書かれている場合。
・相続人全員で行う遺産分割協議で配偶者に与えることを決めた場合。
・争族になり遺産分割がまとまらず、家庭裁判所で審判官が配偶者に配偶者居住権を与えることが妥当だと判断したとき。 

配偶者居住権は「親と子が相続争いを起こす時代である」ことを前提に、配偶者を守るためにつくられたものだと言われています。

確かに後妻と前妻の子供が争って配偶者の居住が脅かされることを防ぐ効果はあるかもしれません。しかし配偶者居住権を争いで取得するのは悲しいことです。

配偶者居住権を取得するために家庭裁判所のお世話になることがないよう、遺言作成や遺産分割協議では、この権利を念頭に置き行わなければなりません。
相続実務に大きな影響を与えることは必須です。

 この配偶者居住権は登記がされ譲渡も出来ます。自宅で暮らせず施設に入らなければならなくなった時、譲渡出来ないと困るためです。
しかし、この権利を買う人がいるのでしょうか?相続税の対象になるとしたら、いくらで評価するのか。現場では様々な問題が出てきそうです。

この他にも、自筆証書遺言、遺留分、相続預金の引出し、被相続人に寄与した相続人以外の者の特別寄与料、等々、相続実務に影響を与える改正がたくさんあります。

昭和23年以来の大幅な民法相続法改正。家族の在り方が変化しているため、改正は必要なことです。しかし、新たな権利が出来、その権利をめぐり争いが増えるという懸念は拭えません。相続をアドバイスする者は、更に資質を高めなければなりません。

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