5年前にご主人を亡くし、子どもがなく一人暮らしの奥様が亡くなりました。第3順位の相続で奥様の兄弟姉妹が相続人となります。
3人が山口県、1人が佐賀県に住んでいます。末弟(Aさん)が上京し、葬儀や遺品整理など一切を済ませ山口に帰りました。遺産のマンション売却と相続手続きを一括してできるところを紹介してほしいと、葬儀社が頼まれ私を紹介してくれました。
Aさんはすでに山口に帰ってしまい、紹介されたあとは電話と郵便でのやり取りです。一度もお会いしたことはありませんが、私を信頼し全てをまかせてくれました。
相続人の確定をしてみると、父親は離婚し先妻に長男を託し再婚し、後妻との間に4人の子供がいます。被相続人を除き山口在住で両親を同じくする兄弟(全血兄弟)が3人、佐賀在住で父親のみを同じくする兄弟(半血兄弟)が1人、相続人は4人です。
半血兄弟の相続分は全血兄弟の1/2です。それでは各相続人の相続分を出してみましょう。①全血兄弟と半血兄弟全員の人型を書いてください。②全血兄弟の前に団子を2個置きます。③半血兄弟の前には団子を1個置きます。③全部の団子の数(7個)が分母になります。各相続人の前にある団子の数が分子となります。相続分は全血兄弟が2/7で、半血兄弟は1/7となります。
労の多かったAさんがマンションを取得し、費用を全て差し引き残ったお金は全員に各相続分で分配することを提案しました。
この種の相続は先妻の子と後妻の子の人間関係の良しあしが遺産分割に影響してきます。半血兄弟とは疎遠でほとんど付き合いがな かったそうです。これは「まずいな」と思いました。
「どこの馬の骨か分からない奴に任すことなどできるか」と言っていた半血兄弟の長男ですが、最後は誠意が通じ、心をひらいてくれました。そして奥様の相続は無事に終了しました。
ところがやっかいな問題が残りました。マンションは亡くなったご主人との共有になっています。まだ、相続手続きをしていません。この相続を処理しなければマンションは売却できません。
相続人はご主人の兄弟姉妹が6人で全員が北海道に住んでいます。ご主人が亡くなった瞬間に3/4が奥様に移っており、相続人は全部で10人です。奥様側の兄弟はAさんに譲り、相続分を放棄しましたが、ご主人側の兄弟は全員が相続分を主張してきました。
Aさんが共有持分を取得し、代償金をご主人の兄弟に払うことで話はまとまりました。あとはマンションを売却し一件落着です。
カモはスイスイと優雅です。が、外から見えぬ水面下では激しく足を動かしています。相続実務もさりげなく見えます。しかし、外から見えぬ水面下では多くのエネルギーを消耗します。
案件が無事完了した時は、近くのそば屋で充実感と疲れが混じった身を癒します。この時に一人飲むお酒の味は格別です。