得るは捨つるにあり(パート2) 野口レポートNo331

人は長い人生のなかで窮地に立ったり、決断を迫られることがあります。それがいつ来るか分かりません。財産や地位や見栄など思い切って捨てる覚悟ができれば光がさしてきます。

いま国会が裏金問題で揉めています。何か不祥事があると議員辞職が話題になります。いさぎよくバッジを捨て、心を改め精進すれば「みそぎ選挙」で勝機も出てくるというものです。

相続で譲った人が幸せになる、この不思議な事実も「捨てる(譲る)から得られる」のではないでしょうか。

地主の貸宅地の経営は、雨漏りやリフォームの必要もなく、適切な地代や更新料を取っていたら悪い商売ではありません。が、相続税を考えると、資産のように見える負債です。貸宅地の相続税を地代から取り戻すには何年かかるでしょうか、やっと取り戻したと思ったら次の相続が忍び寄っています。思い切って生前に整理をしておけば結果として財産を残すことができます。

〇〇製薬のサプリメントが社会問題になっています。お金を使い美味しい物をたくさん食べる。コレステロールが上がる。お金を使いサプリで下げる。スリムな身体や健康を得るには「腹八分目」、飽食を捨てることです。「あんな思いをするなら太ったままでいい」数年前に無理なダイエットで九死に一生を得た女性の言葉です。

近年、世の変遷はすさまじいものがあります。我々高齢者は時代の変化に心がついていきません。心にも「老眼鏡」をかけ、古いものを捨て、新たなものを受け入れる心構えが必要です。

朝ドラ「ブギウギ」が終わりました。最終回の東京ブギウギは圧巻でした。主演を務めた俳優の趣里さんは、「笠置シヅ子」を見事に演じてくれました。俳優と歌手を両親に持つ天性の血筋を感じます。

戦後の世の中を歌と踊りで明るくしてくれた大スター歌手の笠置シヅ子さん、40歳の若さで歌を捨てることを決断し歌手を引退しました。惜しまれてやめる見事な引き際でした。

時は平成5年になります。30年間続けてきたG S(ガソリンスタンド)も老朽化が目立ち、大改装を施しこのまま続けるか、閉店するか、苦渋の決断を迫られました。

自分の歳(48歳)からして転業するにはラストチャンス、思い切って閉店を決断しました。まだ惜しまれてやめられた時期でした。もし5年遅かったらこの決断はできなかったでしょう。

当時はこの狭い地域に8店舗ものG Sがひしめいていました。最初に閉店を決断したのは私のところでした。30年の間に歯が抜けるように7店舗が閉店し、かろうじて1店舗が残っています。

あのまま続けていたら自分の人生はどうなっていたか、考えるとゾッとします。思い切って捨てたから今があるのです。

人生で決断を迫られた時、にっちもさっちも行かなくなった時、「得るは捨つるにあり」この言葉を思い出してください。

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