相続させる遺言 中條レポートNo156

民法986条に「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることが出来る」と書かれています。

それでは相続人に「相続させる」という遺言でも、
・遺贈と同様に放棄できるのか。
・放棄した後、相続人全員で他の財産を含め遺産分割出来るのか。

☆このことに関して参考になるH21年東京高裁の判例をご紹介します。
被相続人A 相続人X Y 乙 の3名。
相続財産 不動産(以下本件不動産という)、現金、貯金。

Aは本件不動産をYに相続させる遺言を書き亡くなりました。他の財産については遺言書に記載されていませんでした。Yは本件不動産所在地に居住していなかったため、本件不動産を相続することを望まず、現金・貯金の取得を望んだため、遺言の利益を放棄し遺産分割を行うことを望みました。しかしYZも本件不動産の取得を望まなかったため裁判になりました。

決定内容
Yは本件遺言の利益を放棄することは出来ない」としYが本件不動産を相続しました。

上記決定がなされた理由
・本件相続させる遺言は、本件不動産を何らの行為を要しないでYが確定的に取得したことになるため。
・相続人全員で本件不動産を遺産分割の対象財産とすれば、遺産分割の対象となるが、その旨の合意が成立していると認められないため。

この判例から学ぶこと
 「相続させる」と書かれた遺言の利益が放棄出来るかどうかは賛成説・否定説に分かれます。最高裁の判断が待たれます。
この判例が教えてくれる事は、相続人が誰も望まない資産を「相続させる」遺言に書くと、争いの原因になりかねないということです。
不動産は個性が強い財産です。その個性がマイナス方向に働くと売却も困難になることがあります。やっかいな不動産を相続したい人はいません。このことを頭に入れて遺言を書かなければなりません。

不動産の特性をよく知る事が大切です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>